5/4-5の2日間で五島列島北部にある野崎島をお訪ねしました。以前はスタッフとして、この島でガイドやツーリズムの仕事をさせていただいた、ご縁のある、そして、今も心にいつもある場所です。その他、環境省委嘱の自然公園指導員として、この島の様々な遷移を今も注視している場所でもあります。
ほぼ無人状態の島は「パッと見」自然豊かに見えますが、表土流出や森林更新の途絶、植物の多様性喪失などなど、(通常、ヒトの時間スケールでは、自然の変化は捉えにくいことが多いのですが)ごく短期間での変化が加速しているのが目に見えて解る、深刻な状況となっています。…その要因や考察は、またの機会に。
今回は、折しも諮問機関であるイコモスがユネスコの世界遺産委員会に「文化遺産への登録」を勧告したニュースが全国を駆け巡った日に島へ上陸することとなりました。
ここ数年、世界遺産登録を見越して、入島出入口を1箇所に限定したり、集落跡の一部を修景したり、ビジターセンターを作ったり、等々の準備に地元行政も努められてきました。
人材も予算も大変限られる難しい状況下でも精一杯の努力をされていることは間違いありません。
ですが、ローカルなツーリズムの実践者として、持続可能な責任あるツーリズムを志す一人として、(加えて、自然公園指導員として、)あえて一言申し上げたいことが…。 集落跡は、この地の自然と暮らしを営んできた人々の関係性や刻まれた時間が顕在化している場所、です。その意味でビジターの目の前に広がるのは、まぎれもなく「文化的な景観」なのです。
その景観にこれら(画像1&2)は果たして馴染んでいるでしょうか?この空間に溶け込んで景観に調和しているでしょうか?文化的景観から「浮いて」しまってはいないでしょうか?
一方で、今後しばらくの間は増加が見込まれる「初めてこの島を訪れた」ビジターに対しては「わかりやすさ」が求められるのは間違いありません。
この島に限らず全国各地共通の課題です。
看板、のぼり、垂れ幕etc. それらの大きさ、色あい、形etc.
その景観や文物、自然が持つ価値を損ねてしまっては本末転倒です。
「わかりやすさ」と「景観との調和」
地元行政のみならず、様々な事業者や地域で暮らす方々も含めて、 「自らの地域や場所を大切に護り、利活用し、将来世代へその価値を継承していく」とはどういうことなのか。自らの地域では、そのために何をどのように行っていけば良いのか。 (その結果の選択肢は様々あって良いと思います。どれが正解でどれが間違い、は有りません。 自ら考え、自らの最適解を実践してみること。それが大切かと思うのです。)
あらためてそう感じた今回の野崎島再訪でした。
Discover Walks 代表社員 亀津淳司 https://www.discoverwalks-j.com